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【学会発表用ポスター】デザインのコツ #1

今年は初めて学会のポスター発表用のポスターを2題デザインしたので、忘れないうちに考えたことをメモしておきます。今回は研究者とデザイナーと両方の立場で製作することができたので、ぜひ、学会ポスター作りで悩んでいらっしゃる若い研究者の方や、学会ポスターのデザインを担当する印刷会社のデザイナーにご覧いただければと思います。

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(1)目標を決める

通常はお金をかけてプロにポスターの製作を依頼をすることは難しいので、研究者本人がポスターも作成することが多いと思います。すると 研究者=デザイナーという部分で、参会者の意識と少しのギャップが生じてくることがあります。

研究者は、多くの人に研究の成果や素晴らしさを知って貰いたい!という気持ちを持っています。一方デザイナーは、研究者の想いを大切にしながらも、参会者の目にどう映るか?どのようにすれば短い時間で直感的に理解できるように表現するか?等、最適なプレゼンテーションの方法を考えるのが仕事です。

このデザイナーの客観的視点を欠いてしまい、よく陥りがちな失敗は 、伝えたい想いが強過ぎて研究の手続きや考察に言葉を尽くしてしまい、ほとんどの領域が文字に埋め尽くされた平坦なポスターになってしまうことです。

この失敗を克服するために、ノウハウ本に書かれているアドバイスは、「イラストや写真で表現できることは文章で書かない」「文字の大きさにメリハリをつける」ですが、ノウハウ本の著者も研究者ですので、デザインのプロが見ると若干違うような気がします。 まず1番に決めた方がいいのは、目標です。その目標を達成するために、最適な配置や文字の量感を検討するというのが、デザインの正しい順序です。

今回私は、ポスター発表の評価要素である「ポスターの静的要素」と「発表時の動的要素」に文句ナシの満点を貰うことを目標としました。

「静的要素」はほぼ全てがポスターの出来にかかってきます。なぜなら、例えどんなに内容が空っぽのキャンペーンでもデザイナーの手に掛かればワクワクするようなキャンペーンポスターが完成してしまう…これが視覚情報デザインの魔法です。研究の学術的価値や将来性・独創性等は、他の評価項目に入っていますから 「ポスターの静的要素」の評価はポスター次第と言えるでしょう。

2つ目の「動的要素」ですが、ここにもポスターが重要な役割を占めます。プレゼンをする研究者は既にポスターを見た参会者へ説明をすることになります。ここで、大きなポイントは 「ポスターを見ることによって興味をひくことができたか?」「ある程度の内容を理解し、説明のベースとなる共通認識が生まれたか?」 ということです。研究分野によって違いはあるとは思いますが、少なくともこの2点がある程度成功していれば、アドバンテージになります。また、例えばアイコンのようなイラストをポイントに配置したり、シンボリックな画像をキーにそれぞれの関係が展開するようなイメージを作っておく等 研究内容の説明がしやすいポスターにしていれば、プレゼン者の大きな助けにもなります。

もちろん、共同研究者やスポンサーを探したい場合もあるでしょうし、設定する目標は研究者それぞれです。

(2)イメージ戦略

先ほど参会者の興味をひく、と書きましたが、興味にも種類があり、大雑把に分けると下の2つになります。

① 研究者としての興味

② 人間としての好奇心

①は、研究そのものの評価や参会者のバックストーリーが影響するので、ポスターだけでどうにかできる可能性は低いものです。しかし ②はポスターだけでどうにでもなります。

私は、ネットや新聞・雑誌を見ている時に、全然興味のないニュースだなぁと思いながらも、なぜか記事を開いて読んでしまうことがあります。普段ならクリックしようと思わない分野でも、ニュースのタイトルやアイキャッチ画像が意味深なら興味を掻き立てられ、ついつい開いてしまいます。それと同じで 「簡単な謎解き」や「意外性」などの好奇心をくすぐる要素があれば目を向けて貰うことはできます。

そして、それ以外にも「好ましい外観」「本物の香りがする・信頼がおけそうな外観を備えている」ものに対しては、情報を確認しておこう(知っていても無駄にはならなさそう)と考えやすい特性もあります。いわゆるブランディングと呼ばれるものの効果です。

参会者はわざわざ会場まで足を運んで研究発表を聞きに来ているわけですから ブランディングに成功すれば足を止めて貰える確率は高まります。

では、それをどのように実現するか?

→ 答えは 発表する研究や研究者の個性に合わせることです。

今回の学会発表は、企業と有名な研究者との共同研究でした。ただ発表者は企業側の人間だったため、私は3つの作戦を立てました。

  • アカデミックではないかもしれないが、場の雰囲気を壊さない程度に、企業は企業らしいビジネスプレゼンテーションの風を持っていきたい(プレゼンノウハウも資金力もある)
  • 研究成果が社会貢献に直結するという未来のイメージを大切に(現場での成果を見えやすく)
  • 珍しい研究テーマではあるが、企業がプロジェクトとして資金をかけているため、大掛かりであることはアピールできる

あなたがもし学生や若い研究者で、発表する研究が新しい分野のものなら、新しい世代の着眼点の面白さや未来志向をアピールするのもいいかもしれません。研究内容や研究者の個性にあったポスターを使うことは、自分に似合う服を着るのと同じです。 参会者は、発表者の人となりを見て、ポスター以外の情報を得ます。もしポスターのイメージが発表者や研究内容のイメージとピッタリと一致すれば、発表者の言葉はより聞く人の心に訴えるでしょう。

(#2に続く)

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